top of page
hero-bg-08.jpg
Profet AI Insight

私たちが最新情報や産業観点を理解することで

TSMCと台湾が半導体産業のデジタルトランスフォーメーションをリードした鍵となる理由

密接な関係にある台湾の経済成長と半導体産業の成功



作者:Profet AI共同創業者の黄建豪CEO 原文はIndustrial Automation Asia (IAA) 2023年9月号に掲載。


Semiconductor industry in Taiwan utilizes AI to fundamentally upgrade

台湾経済は半導体産業に大きく依存している。半導体産業の国内総生産(GDP)に占める割合は15%だ。台湾は世界半導体産業をリードする存在であり、世界の半導体の60%を生産し、うち先進プロセスは90%を超える。


台湾は半導体産業が築いた世界をリードする地位を工業政策に反映させ、近年半導体産業のデジタルトランスフォーメーションを強調するようになった。国営機関がイノベーションに尽力する一方、民営企業も積極的に協力し、産業を超えた提携が進んで産業全体の進化を推進している。ODM/契約製造モデルのプレッシャーの下、台湾半導体産業は早くからデジタル化を迫られ、効率的に多くの顧客と提携するようになった。そしてメーカーはデジタルトランスフォーメーションに着手し、フローと配合の「標準化」と「均一化」を実現した。


台湾積体電路製造(TSMC)は、この好例のひとつだ。世界半導体産業をリードする企業で、近年驚くべき利益を上げ、先進プロセスと技術への投資を続けている。同社が構築した標準は、台湾全体に影響を及ぼしている。


本文は、台湾半導体産業のデジタルトランスフォーメーションにおける工業政策と産業間の提携について掘り下げる。また、民営企業の成功例としてTSMCを例に挙げて分析する。


工業政策4.0:製造業の競争力を維持


台湾の産業政策は長期にわたって半導体産業の発展を基礎としてきた。1973年設立の工業技術研究院(ITRI)が発展を主導し、その目的は技術進歩と経済成長の促進だ。ITRIは台湾半導体産業の発展、とくにTSMCの成長において重要な役割を演じてきた。


ITRIのほか、半導体産業はそのイノベーションを支えてきたネットワークが存在する。

 

国家実験研究院(NARLabs)

NARLabsは政府が資金提供する研究機関で、半導体産業に研究開発サービスを提供している。NARLabsとTSMCがリリースした「N16 ADFP(Academic Design Foster Package)」は、世界初のFinFET技術と仮想チップ設計の教育訓練を結びつけた育成パッケージだ。これにより、台湾はハイエンドチップ設計の人材育成の品質を高めることができた。


HTFAは、台湾半導体設備・材料産業協会(SEMI Taiwan)の支持の下で2017年に設立した。製造業各社の提携を推進し、台湾ハイテク工場の施設と設備の技術水準を高めることが目的だ。設立当初45人だったメンバーは現在129人となり、学術界やシンクタンク、TSMC、華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)、聯華電子(UMC)、友達光電(AUO)など業界をリードする企業の代表が参加している。


2021年より、HTFAはフォーラム「ハイテク設備のデジタルトランスフォーメーション」を開催し、異業種間の実践経験と知識をシェアしている。これにより、半導体メーカーがAIやビッグデータなどを利用して効率と価値を高め、イノベーションを推進させることを目指している。


400のパートナーと踊る:台湾モデルはなぜ早期にデジタル化に成功できたのか


最近『天下雑誌』が主催した半導体フォーラムでTSMC創業者の張忠謀氏は、ライバルの米インテルと比較した強みについて問われ、「TSMCは400のパートナーと共に踊ることを学んだ。インテルはずっと一人で踊っている」と答えた。TSMCは専業ファウンドリーとして、数百社の顧客に契約製造サービスを提供している。一方で、インテルはファブレスモデルを選択した。これはつまり、全て自社で処理しなければならないということだ。競争力を維持し、業界で勝ち続けるために、TSMCは効率を追求し、高水準の標準化とフローの均一化を続ける必要がある。


このような契約製造モデルは台湾の特色であり、積極的にフローの標準化を進めて顧客のニーズを満たす必要がある。このため、台湾のICメーカーは早くからデジタル化を実現した。ライバルよりも早くデジタルトランスフォーメーションに着手し、自社のベストプラクティスを開発して、顧客の要求を満足させている。


次世代のダンスパートナーを育成


台湾は数十年にわたって半導体工程の優秀人材の育成に尽力しており、現地メーカーのデジタルトランスフォーメーションにおける強みとなっている。これまで半導体産業は最高の職業として台湾の最も優秀な人材を引きつけてきた。


スピーディーに多くの顧客に対応し、大量のデータを扱うため、台湾の半導体人材はデジタル化における訓練を受けている。彼らは優れたパフォーマンスを発揮し、次世代の「400のダンスパートナー」に育っている。


台湾モデルの模範生、TSMC


TSMCは台湾モデルの「最優秀模範生」であり、半導体産業のイノベーションとデジタルトランスフォーメーションの最高峰であることは疑いの余地がない。デジタルトランスフォーメーションがブームとなると、台湾の全産業がこのリーダーに追随し、利益を得た。TSMCのデジタルトランスフォーメーションは、▽スマート製造、▽デジタルサプライチェーン管理、▽高性能ハイブリッドクラウドコンピューティング・サービス、▽作業環境のモダナイゼーション、▽チームの協力──の5大目標に分かれる。


TSMCのデジタルトランスフォーメーションの鍵のひとつに、組織の再編成とフローの改革に集中したことが挙げられる。流動的な組織を設置し、どのレベルの従業員も直接その他のレベルまたは部門に連絡が取れるようにした。これにより、組織の上下でのみやりとりされる伝達方法に変革を起こした。


また、TSMCはスマート管理技術の開発を続け、意思決定の速度を向上させている。同社のデジタル意思決定プラットフォームはシーケンス化されており、株式が市場取引プラットフォームで自動的にマッチングされる金融市場の取引のようだ。同社はまた、AIやビッグデータ分析、高性能計算などを導入して、既存の製造システムのスマート化と標準化に取り組んでいる。


TSMCのデジタルトランスフォーメーションのもう一つの鍵は、2008年にリリースしたオープンイノベーションプラットフォーム(OIP)だ。これは一つのエコシステムで、顧客にIPタグ4万件以上、技術ドキュメント3万8000件以上、0.5~3ナノメートル製造プロセスの設計パッケージを提供するもので、世界の半導体産業にイノベーションをもたらした。TSMCは早期から他社との密接な提携を経て、先進プロセスのテクノロジーノードの設計に関する問題を解決してきた。OIPアライアンスには、エレクトリックデザインオートメーション(EDA)16社、クラウド6社、IP37社、デザインセンターアライアンス(DCA)21社、そしてバリューチェーンアグリゲーター(VCA)8社の提携パートナーが参加している。





bottom of page