2021年より開催されている「Galaxy Summit（ギャラクシー・サミット）」は、毎年トップ企業、優秀なスタートアップ、学術界からの出席者が未来の企業経営や発展などのトレンドについて探究するイベントだ。このイベントに杰倫智能科技(Profet AI)は2年連続で参加し、産業を牽引する企業代表と「製造業のAI応用」と「AIデモクラシー」について討論してきた。イベントには1000人以上が出席し、各界から好評を得ている。このギャラクシー・サミットが今回初めて「Galaxy Quest（ギャラクシー・クエスト）」としてベトナムで開催された。
Profet AIはギャラクシー・クエストでフォーラムシリーズ「Crossover Talks（クロスオーバー・トークス）」を開催した。台湾大学情報管理学部の李家岩教授、Hive Ventures（蜂行資本）創業パートナーの李彦枢氏、台湾人工智慧学校（台湾AIアカデミー、AIA）の郭秉宸産学長、PwCの銭家龍執行董事、友達数位（AUOデジテック）の趙新民執行副総経理、MacroventionのDen Ng セールスディレクター、正新橡膠工業の陳柏嘉最高情報責任者、五崧捷運の邱承緯副総経理、連展投資控股の詹長霖イノベーションアドバイザーら、トップ企業のリーダーと学術界の専門家が登壇し、台湾及びベトナム製造業のAI応用の発展について討論が行われ、復活のチャンスをつかみ、デジタルトランスフォーメーションに投資し、データ知識を力としてAIツールとエコシステムのパートナーを活用することを出席者へ提案した。イベントには約80名の台湾の大手企業とベトナムの大手メーカーが参加し、人材のデジタルアップグレード戦略について盛んな交流が行われた。
近年、ベトナム経済の発展は目覚ましく、数多くの多国籍企業が工場を相次いで設置している。しかし、不安定な国際情勢とアフターコロナ時代の到来によって、世界市場の需要は低迷しており、ベトナム製造業も課題に直面することとなった。Profet AIの共同創業者である黄建豪CEOは「多くの顧客がベトナム市場に非常に注目している。たしかにフレンド・ショアリング（friend-shoring）がベトナム製造業に目覚ましい発展をもたらしているが、これにより人材のアップグレードとサプライチェーンの移動が需要な課題となった。Profet AIは人材を育成し、AIですばやく結果を出せるように製造業を支援してきた豊富な経験がある。今回海外開催のクロスオーバー・トークスで台湾の高水準のAI官民学提携と企業リソースを統合し、成功例をシェアして、ベトナム製造業が人材育成、デジタルアップグレードとデジタルトランスフォーメーションをよりすばやく効果的に実現し、世界製造業における重要性を高められるようにサポートしたい」と述べた。
景気循環の周期に直面 スマート製造とデジタルによる意思決定を推進
今回のフォーラムは、台湾大学情報管理学部の李家岩教授のトークから開始した。李教授は、いかに企業がデジタル化によって景気循環に対応すべきか、貴重な見解とプロフェッショナルなアドバイスを提供した。企業は積極的にデジタル化に投資してチャンスをつかみ、さらに未来のチャンスを予見し、より大きなものにすることが必要であり、デジタルトランスフォーメーションによって競争力を高め、競争が熾烈な市場から脱するべきと喚起した。
このほか、李教授は、組織はＡＩの統合文化を構築し、関連能力を高め続けることが必要だとし、この過程は経済低迷期だけでなく、常に続けるべき努力であると強調した。最後に、従業員全員が参加し、AI統合を推進した時にこそ、企業は真のデジタルトランスフォーメーションを達成できると述べた。
ビッグAI時代の到来 台湾AIのトレンドを把握
Hive Ventures（蜂行資本）創業パートナーの李彦枢氏は、同社が発表した2022年の台湾企業のAIトレンド現状報告を紹介した。報告では、新型コロナウイルス感染症流行のAI応用に対する影響も調査しており、対象企業の57.6％が新型コロナ流行によってAI導入が加速したと回答した。また、かつてAI導入は販売分野が多かったが、現在は経営効率の向上、製造プロセスの最適化における重要性が高まっており、製造業におけるAI応用がとどまることなく広まっていることも分かった。これを受けて李氏は、AI導入を効果的に加速させるためにはノーコードプラットフォームを採用してフローを簡素化、標準化し、技術者以外も参加できるようにするべきとアドバイスした。
AI応用のチャンスと挑戦に立ち向かう
Profet AIの余常任世界業務総経理も、とどまることなく広がるAIブームに対する見解をシェアした。「台湾はIC設計、半導体、ネットワーク通信、サーバー、ディスプレイ、プリント基板、工業機械という7つの1兆元（320億米ドル）産業を有する世界製造業のフロントランナーであり、アジア製造業におけるデジタルトランスフォーメーションとAI応用の先駆者であると言える」と述べた。
しかし、デジタルトランスフォーメ
ーションの実現には、専門人材の不足や設備の制限、AI応用の現場における複雑性など、いくつかの挑戦に立ち向かわなくてはならない。余世界業務総経理は、正しいツールと容易に操作できるノーコードプラットフォーム、そして戦略的な育成計画で、企業は人材不足の問題を解決し、そのプロセスを最適化してこれらの挑戦に対応することができると語った。
フォーラムのパネルトーク1では、友達数位（AUOデジテック）の趙新民執行副総経理、MacroventionのDen Ng セールスディレクター、PwCの銭家龍執行董事が登壇し、AI応用の長い道のりと、強力なパートナーとしていかに各方面のサポートを提供するかを討論した。
限界価値を発揮 Profet AIとデジタル戦況報告室を構築
パネルトーク1の始めは、友達数位（AUOデジテック）の趙新民執行副総経理が、スマート製造の模範生である友達（AUO）が歩んだ10年のデジタルトランスフォーメーションの道のりをシェアし、スマート製造を実現した後のソリューションについても惜しむことなく同業やその他産業に紹介した。
また、趙執行副総経理は、中国の「規模の経済」に対応するため、AUOが一般消費者向け製品の製造から、eスポーツ、医学、車載用パネルなど少量多品種製品の生産に切り換えたことに触れ、このような変革は自動化とAI技術に頼って、コスト削減と生産能力向上を図る必要があったと述べた。
顧客から長期的な提携パートナーとなったAUOデジテックは、Profet AIのAutoMLプラットフォームによって2000～3000個のモデルを現場で使用しており、生産、研究開発からサプライチェーンの管理までにおいてAIデモクラシーを達成、生産能力を30％以上向上させた。
趙執行副総経理は、AUOは限界価値を発揮して、スマート製造ソリューションをサプライチェーンのパートナーに提供し、顧客の課題を共に解決したいと述べた。AUOデジテックが開発したIoT ゲートウェイ「SPIIDER」で収集した既存設備のデータを、Profet AIとの提携で領域専門家が応用できるようにし、完全なデジタル戦況報告室を構築することが可能だ。
東南アジアのパートナー 現地市場のニーズを把握
優れたソリューションとは、その土地の事情に適した措置を取れなければならない。Macroventionは東南アジア市場で長年の経験を持ち、LITMUS、DELL、EMCなど世界的に知られるソフトウエアメーカーの代理店として東南アジアの大手顧客にITソリューションを提供してきた。同社のDen Ng セールスディレクターは、「東南アジア市場は『高効率』がかぎで、スピーディーな市場の変化に高効率で対応して、市場競争を勝ち抜かなければならない。最も簡単な方法はデジタルトランスフォーメーションだ。AIによるデジタルフォーメーションで、高い投資報酬をもたらすことができる」と述べた。
Profet AIの東南アジア市場初のパートナーとして、MacroventionはProfet AIが現場スタッフのニーズを理解しており、製品が現場で容易に使用できるだけでなく、データサイエンティストを雇用する高いコストを削減することができる点を評価している。Den Ng セールスディレクターは、Profet AIのプラットフォームはデータ統合によってただちに重要要因を見つけてAIモデルを構築することが可能で、高効率を追求する東南アジア市場に非常に適していると述べた。
コンサルタントの広い視野で デジタル化計画の完成をサポート
また、今回はITコンサルティング業界で著名な銭家龍氏も登壇した。台湾の上場企業多数へのコンサルティング経験を持ち、現在はPwCの執行董事を務める。銭家龍執行董事は、顧客にしばしば「景気が悪い時は何をすればいいのか」と聞かれるという。PwCのレポートは、AI応用はサプライチェーンの再構築よりも重要だと指摘しており、銭執行董事は「デジタルトランスフォーメーションにAIは欠かせない。今やデータは単なる資料ではなく、知識として見なければならないものだ」と述べた。また、かつて多国籍企業にERPを導入した際、まずフローを整理するよう提案したが、その整理の過程で若い企業はベテラン技術者の退職問題に直面しており、単にERPを導入しただけでは現状の問題を解決できないと気づいたという。銭執行董事は、AIでベテラン技術者の経験をデジタル化してこそ、より速くデジタルトランスフォーメーションの効果を体現できるとし、現在Profet AIと密接な提携関係を結び、専門的かつすばやく使用できるAI技術とPwCの広い視野で、大型グループのデジタル化計画の完成をサポートしている。このほか、銭執行董事は、未来のESGブームに対し、企業はできるだけ早くAIツールを導入して、正確な予測分析と意思決定を行い、データの価値を発揮するべきだと喚起した。
パネルトーク2では、世界タイヤメーカーのトップ10に入る正新橡膠工業の陳柏嘉最高情報責任者、半導体設備運輸のトップ企業で、台湾の重要産業を支える五崧捷運の邱承緯副総経理、そして生産能力の最適化のプロである連展投資控股の詹長霖イノベーションアドバイザーが登壇し、AI導入の成果と実績をシェアした
ベテラン技術者の経験をデジタル知識に 各現場で応用
まず、正新橡膠工業の陳柏嘉最高情報責任者は、ベトナムを始めとする東南アジア市場に10年以上投資を行ってきたことに触れ、「我々はベトナム市場への投資を増加させるだけでなく、いかにベトナム市場に協力するか、台湾のベテラン技術者の経験を持ち込むことができるかを考えてきた」と述べた。正新橡膠工業は、AIツールによってベテラン技術者の経験をデータ知識とし、各工場で応用して生産能力を引き上げただけでなく、現地作業員の技術力も高めている。このような人材育成方法とHRシステムのデータをAIで分析し、ベトナム人従業員の離職問題を効果的に解決してきた。
正新橡膠工業がProfet AIのプラットフォームで重要データを見つけ出し、ベテラン技術者の経験をコピーした昆山工場は、完全自動工場化を達成した。陳最高情報責任者は「現在さらなるデジタルアップグレードを推進しており、AIコンピューティングを増やすのと同時に、クラウド応用によって設備調達数を減少させることが目標だ。Profet AIの完全なエコシステムのパートナーのおかげでより良い統合結果を達成している」と語った。
幅広いAI応用で 経済低迷期に力を蓄える
五崧捷運の邱承緯副総経理は、自社のデジタルトランスフォーメーションの経験についてシェアした。副総経理に就任した後、傾向が全く見えない紙ベースの作業から改善に着手し、データの収集、フローの設計、ソフトウエアの研究開発まで自ら手掛けた。その後、新型コロナ流行を経て、デジタル化の重要性を理解し、従業員にコロナ流行後に備えるよう指示した。同社は現在、幅広くＡＩを応用しており、車両メンテナンスの点検と修理予測において結果を出している。誤差は0.2週で、車両の任務執行時の稼働停止を削減しており、今後はタイヤ費用の予測に着手する予定だ。邱副総経理は「タイヤの消耗は運輸業にとって極めて高いコストとなる。データから最適なタイヤを見つけ出すことは、当社の役に立つだけでなく、タイヤのサプライヤーが最適な製品の組み合わせを見つけられるようサポートすることにもつながる」と指摘した。
新たなツールで新たな思考を 全従業員参加のデジタル化で共通言語を構築
従来の電子部品生産から健康・医療、車載用充電設備へと発展してきた連展投資控股は、デジタルトランスフォーメーションを重視し続けてきた。詹長霖イノベーションアドバイザーは、同社は経営陣もデジタルトランスフォーメーションを非常に支持しており、新たなツールが新たな思考をもたらすと考えているという。連展投資控股はデジタルトランスフォーメーションを推進する際、一般企業のようなトップダウンではなく、「サンドイッチの法則」を採用した。一般社員もデジタル化プロジェクトに参加させることで、上層と下層が共通のデジタル言語を持つようにし、デジタルトランスフォーメーションコンテストを毎期実施している。現在、651件のデジタル化プロジェクトが実行され、このうちProfet AIプラットフォームを使用したプロジェクトが470件だ。詹イノベーションアドバイザーは、なかでも印象的だったのは「バーチャルメトロロジー」だったと振り返り、「4インチウエハー時代からこの産業に入ったが、この従来型製造業でこれを行うことは実に困難なことだ。バーチャルメトロロジーが登場してから、デジタル・ツイン（Digital Twin）の構築と、デジタル工場やバーチャルワークショップが可能となった。これがなければスピーディーに現場の技術を他の工場にコピーすることはできない。正確な製造も重要だが、AIツールを応用すればライバルとの距離を大きく開くことができる」と述べた。現在、同社はProfet AIのコンサルティングのサポートで240人からなるデジタルチームを有し、生産、販売、人事、研究開発、財務、情報管理までAIデモクラシーを達成している。
數位人才培育如屯田 以 AI 賦能領域專家才是企業永續心法
台湾で初めてAI人材育成を手掛けた台湾人工智慧学校（台湾AIアカデミー、AIA）の郭秉宸産学長は、東漢末に曹操が採用した「屯田制」を例えに挙げた。平時は兵士が耕作を行って食糧を貯え、戦時にはその備えで戦うという制度だが、まさに企業も同様で、普段から領域専門家とベテラン技術者の経験でAIエンパワーを推進してこそ、デジタルトランスフォーメーションによるアップグレードの時にヘッドハンティングやコンサルティングサービスに過度に依存する必要がなくなる。郭産学長は、人材の流出を心配するなら、積極的にAIへの投資を行ったほうがよいと述べた。